韓国の労働法・社会保険・税務について
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韓国の労働法
韓国現地の労働法、労働条件明示義務、労働紛争、試用期間、休日、休暇、時間外労働、休日労働、有給休暇、出産制度、育児休業制度、解雇法制についてご説明いたします。
韓国における労働時間等の概要は下記の通りです。日本に比べて時間外労働の制限や割増賃金率の高さが特徴的です。
| 区分 | 韓国 | 日本 |
|---|---|---|
| 労働時間 | 1日8時間 1週40時間 |
1日8時間 1週40時間 |
| 時間外労働 | 使用者と労働者が合意すれば、週当たり12時間までの法定労働時間を超える時間外労働が可能。 | 労使協定の締結により、時間制限はない。 |
| 割増賃金率 | ①延長勤務:150% ②夜間勤務:150% ③休暇勤務 8時間以内:150% ④休暇勤務 8時間超過:100% |
①時間外労働・所定休日労働:125% ②法定休日労働:135% ③深夜労働:25% |
| 法定休日 | 1週間に平均1日以上の休日、勤労者の日(5月1日) | 毎週少なくとも1回の休日、または4週4日の休日 |
| 祝日 (2026年) |
1月1日:新正月 2月16日~2月18日:旧正月 3月1日:三一節 3月2日:三一節代替公休日 5月5日:こどもの日 5月24日:釈迦誕生日 5月25日:釈迦誕生日代替公休日 6月3日:選挙日(臨時休日) 6月6日:顕忠日 7月17日:制憲節 8月15日:光復節 8月17日:振替休日(光復節) 9月24日~9月26日:秋夕 10月3日:開天節 10月5日:振替休日(開天節) 10月9日:ハングルの日 12月25日:クリスマス |
元日:1月1日 成人の日:1月12日 建国記念の日:2月11日 天皇誕生日:2月23日 春分の日:3月20日 昭和の日:4月29日 憲法記念日:5月3日 みどりの日:5月4日 こどもの日:5月5日 振替休日:5月6日 海の日:7月20日 山の日:8月11日 敬老の日:9月21日 国民の休日:9月22日 秋分の日:9月23日 体育の日:10月12日 文化の日:11月3日 勤労感謝の日:11月23日 |
労働時間は1日8時間、1週40時間と日本と同様です。しかし大きな違いは、時間外労働の上限が韓国では1週12時間と定められている点です。
| 韓国 | 日本 | |
|---|---|---|
| 内容 | 1日:8時間を超えた場合 1週:40時間を超えた場合 |
|
| 時間外労働上限 | 1週間に12時間 | 労使協定の締結により上限はなし |
| 割増賃金率 | ①賃金の150% ②補償休暇のいずれか |
125%以上 |
| 韓国 | 日本 | |
|---|---|---|
| 深夜の定義 | 午後10時~午前6時 | 午後10時~午前5時 |
| 割増賃金加算率 | ①50% ②補償休暇のいずれか |
25% |
| 備考 | 女性を深夜時間帯に働かせる場合には当該女性の同意が必要(70条) | 妊産婦の請求による深夜労働制限事項のみ |
補償休暇制
韓国の勤労基準法57条により、使用者は、時間外労働、深夜労働、休日労働に対して賃金を支給することに代えて休暇を与えることができる、とされています。
また、割増賃金率に合わせ休暇を付与しなければなりません。
(例:8時間時間外労働した場合に対する補償休暇日数は1日ではなく、1.5日となります。)また、元々休日として定められた日を勤労日とし、代わりに別の日を休日として指定する休日代替制度があります(勤労基準法第55条)。
休日代替が認められるためには、次の条件が必要です。
① 就業規則または団体協約の根拠
② 勤労者への事前通知
③ 事前に特定して指定
韓国の勤労基準法55条では使用者は、1週間に平均1回以上の有給休日を与えなければならないとされています。これが法定休日に当たりますが、勤労基準法50条で労働時間を1日8時間、1週40時間となっており、基本的には土曜を所定休日とし、日曜を法定休日とする企業が多くなっています。
| 韓国 | 日本 | |
|---|---|---|
| 内容 | (法律)1週平均1回以上の休日/1週40時間・1日8時間 土曜日は無給休務日(労働義務はなく、賃金が支払われない日)、日曜日は有給週休(法定休日)とみなします。 土曜日は延長勤労、日曜日は休日勤労と扱いが異なります。 実務上、最低でも24時間前の通知が一般的な基準とされます。 休日を事前に代替すれば、休日勤労手当は発生しません。 官公庁休日を代替する場合は、勤労者代表との書面合意が必要です。 |
(実務上)土曜or日曜 (法律)毎週少なくとも1回,4週間を通じ4日以上の休日、1週40時間・1日8時間 |
| 割増賃金率 | ①賃金の150%を支払う ②代休(事前同意が必要)のいずれか ③補償休暇のいずれか(割増率適用) |
125%以上 |
| 備考 | 女性を休日に働かせる場合には当該女性の同意が必要(70条) | 妊産婦の請求による休日労働制限事項のみ |
<韓国と日本の年間勤務日数の差は?>
韓国勤務日数:365日-18日(祝日)‐104日(法定外休日(土日数))=243日
日本勤務日数:365日-18日(国民の祝日)‐104日(土日数)=243日
韓国の勤労基準法第17条により、使用者は労働者と労働契約を締結、変更する際には、
1.賃金(構成項目・計算方法・支給方法)
2.所定労働時間
3.休日
4.年次有給休暇
5.その他大統領令で定める労働条件
について、明示する義務を課してます。また1から4までは、書面により交付しなければなりません。
韓国には、修習期間に関しての法的な定めはありませんが、実務的には新規採用の場合には設けることが多くなっており、中途採用では設けない場合も多くあります。 期間としては、日本同様3か月程度で修習期間中の評価を理由に契約を解除することは事実上不可能です。賃金は最低賃金以上であれば問題はありませんが一般的には70%~90%を支給することが多くなっています。
韓国でも、日本同様に常時10人以上の労働者を使用する使用者に、就業規則の作成義務及び雇用労働部長官に申告義務があります。
| 明示事項 | |
|---|---|
| 1 | 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交代勤務に関する事項 |
| 2 | 賃金の決定・計算・支給方法、算定期間、支給時期、昇給に関する事項 |
| 3 | 家族手当の計算・支給方法に関する事項(手当がない場合には削除可能) |
| 4 | 退職に関する事項 |
| 5 | 「勤労者退職給与保障法」第4条により設定された退職給与、賞与、最低賃金に関する事項 |
| 6 | 労働者の食費、作業用品等の負担に関する事項 |
| 7 | 労働者のための教育施設に関する事項(教育施設がない場合には削除可能) |
| 8 | 産前産後休暇、育児休業等の労働者の母性保護、仕事と家庭の両立支援に関する事項 |
| 9 | 安全及び保健に関する事項 |
| 9-2 | 労働者の性別、年齢又は身体的条件等の特性に応じた事業場の環境の改善に関する事項 |
| 10 | 業務上及び業務上以外の災害扶助に関する事項 |
| 11 | 職場内のいじめの予防および発生時措置などに関する事項 |
| 12 | 表彰及び制裁に関する事項 |
| 13 | その他の当該事業又は事業場の労働者全体に適用される事項 |
(就業規則の作成・変更手続き)
日本同様、過半数で組織された労働組合がある場合にはその労働組合、ない場合には労働者の過半数の意見を聴かなければならないとされています。
加えて、不利益変更の場合には、同意が必要となります。
勤労基準法第60条により、使用者に一定の条件を満たした者に対して有給休暇の付与義務を課しています。
| 韓国 | 日本 | |
|---|---|---|
| 対象者 | 1年間の所定労働時間の8割以上の出勤率のある労働者 | 6か月継続勤務し、8割以上の出勤率のある労働者 |
| 内容 | 年間最低15日、勤続年数2年当たり1日を加算して最大25日まで付与。(継続1年未満または、8割未満の出勤率の者には、1か月皆勤時に1日の有給付与) 1年以上~3年未満:15日 3年以上~5年未満:16日 5年以上~7年未満:17日 7年以上~9年未満:18日 |
6か月:10日 1年6か月:11日 2年6か月:12日 3年6か月:14日 4年6か月:16日 5年6か月:18日 6年6か月以上:20日 |
| 消滅時効 | 1年 | 2年 |
| 賃金 | 就業規則で定める平均賃金、通常の賃金のいずれか ※未使用の残余有給休暇は賃金として補償する必要があります。 |
就業規則で定める平均賃金、通常の賃金、標準報酬日額のいずれか |
韓国の母性保護・出産制度のしくみは、日本との共通点が多くなっていますが、産前産後休暇中の最初の60日までは会社が通常の賃金を支給しなければならない点は大きな違いです。また、韓国独自の「流産・死産休暇」「配偶者出産休暇」もあります。
| 韓国 | 日本 | |
|---|---|---|
| 生理休暇 | 労働者から請求があった場合、月1日の無給休暇を与えなければならない。 | 労働者から請求があった場合、就業させてはならない。 |
| 産前産後休暇 | 産前産後を通じて90日(配分は、産後45日以上が義務(多胎妊娠の場合、120日(配分は、産後60日以上)) | 産前42日、産後56日(多胎妊娠の場合は産前98日) |
| 産前産後休暇中の賃金 | 会社が60日までは通常の賃金(多胎妊娠の場合は、75日)を支給、30日(多胎妊娠の場合は45日)分は、雇用保険から220万KRWを上限に支給(小規模事業場の場合、優先支援対象企業として見なされ最初の60日(多胎児の場合は75日)も220万KRWを支給もらえる) | 健康保険より給与の3分の2(66%)支給 |
| 流産・死産休暇 | 妊娠期間が16週以上21週以内:流産または死産した日から30日 妊娠期間が22週以上27週以内:流産または死産した日から60日 妊娠期間が28週以上:流産または死産した日から90日 |
– |
| 配偶者出産休暇 | 配偶者の出産日から30日以内に請求があった場合には、20日の配偶者出産休暇を与えなければならない。 この場合、休暇は有給とする。 |
– |
| 検診時間の許容 | 制度あり | 制度あり |
| 育児時間 (有給授乳時間) |
1日2回それぞれ30分以上 | 1日2回それぞれ30分以上 |
| 妊娠中の軽易業務転換 | 請求により有 | 請求により有 |
| 備考 | 妊娠期(12週以内または36週以後)に1日2時間勤労時間短縮申請可能(賃金削減不可能)2016年3月から300人未満事業場施行 |
韓国には、「配偶者出産休暇」が義務付けられており、労働者が請求した場合には5日の範囲内で3日以上の有給休暇を付与しなければならないというのも日本との違いです。
韓国の育児休業制度は、日本よりも柔軟な制度となっており、また手厚い内容となっています。日本と同様女性の管理職率や就業率が低く、国がワークライフバランス施策を推進していることにより、男性の育児休業も推進している様子が見受けられます。
| 韓国 | 日本 | ||
|---|---|---|---|
| 育児休業対象者 | 8歳以下又は小学校2年生までの子を養育する労働者 | 1歳未満の子を養育する労働者 | |
| 取得要件 | 雇用期間が6か月以上(配偶者が育児休業中は取得できない) | 継続して雇用された期間が1年以上の者 | |
| 期間 | 1年 ※夫婦で最大3年可能(それぞれ違う年度に) |
子供が1歳になる日の前日まで | |
| 有給・無給 | 無給 | 無給 | |
| 公的給付 | 育児休職開始日を基準とした標準賃金の80〜100% 育児休職給付一般:休職の期間に応じて、通常賃金の80〜100%、上限160万〜250万KRW ひとり親育児休職給付:ひとり親に該当する勤労者の育児休職では、休職の期間に応じて、別に上限額等が設定される(80%〜100%、上限160万〜300万KRW) |
開始後180日:給与の67% (一定の条件を満たした場合、別に28日について13%の上乗せの給付あり) 181日目以降、50% |
|
| 育児短時間勤務 | 育児期勤労時間短縮は、12歳以下または小学校6年生以下の子どもを育てるために会社に申請した場合、事業主は、代替人材の採用ができない場合や事業運営に重大な支障をきたす場合など、大統領令で定められた場合を除き、許可しなければならない。 短縮した勤務時間に対しては、短縮開始日を基準に育児期勤労時間短縮手当が支給される(雇用保険法施行令第104条の2) 育児期勤労時間短縮手当は、2024年7月1日に通常賃金の100%支援範囲が週あたり5時間から10時間に拡大され、2025年1月1日から通常賃金100%の上限額が200万KRWから220万KRWに引き上げられた。 |
3歳未満の子どものいる労働者に短時間勤務制度義務付け。短縮分の給付はない。 | |
下表でわかる通り、日本の解雇法制と似た制度が多くなっています。異なる点は、整理解雇の4要件が勤労者基準法によって明確に定められていることや、整理解雇で解雇された者の再雇用の優先等があります。
| 韓国 | 日本 | |
|---|---|---|
| 解雇予告 | 30日前に予告が必要。30日前に予告をしなかった場合30日以上の通常の賃金の支給義務有(懲戒解雇等は除く) | 30日前に予告が必要。30日前に予告をしなかった場合30日以上の通常の賃金の支給義務有(懲戒解雇等は除く) 但し、解雇までの日数+賃金支給日数が30日以上となれば良い。 |
| 解雇の意思表示 | 解雇理由と解雇時期について書面で通知しなければならない。 | 特段法律による決まりはない。口頭でも可能。 |
| 解雇の制限 | 業務上の傷病のために休業した期間及びその後30日間、産前産後休業期間及びその後30日間 | 業務上の傷病のために休業した期間及びその後30日間、産前産後休業期間及びその後30日間 |
| 整理解雇 | 勤労者基準法により、下記の4要件の充足が義務付けられている。 1.経営上の合理性 2.人選基準の合理性 3.労働組合又は労働者の過半数を代表する者に対して解雇しようとする50日前までに通知し誠実に協議 4.解雇回避義務の履行 |
判例法理により、下記の4要件を充足することが有効となると考えられている。 1.業務上の必要性 2.人選基準の合理性 3.組合や労働者への説明義務の履行 4.解雇回避義務の履行 |
| 解雇者の優先再雇用 | 使用者は、経営上の理由で労働者を解雇した日から3年以内に解雇当時担当していた業務を遂行する労働者を採用しようとするときは、解雇された労働者が希望するときには優先的に採用しなければならない。 | – |
韓国には、「配偶者出産休暇」が義務付けられており、労働者が請求した場合には5日の範囲内で3日以上の有給休暇を付与しなければならないというのも日本との違いです。
韓国の労働紛争処理制度は、下図の通り、全部で5審制となっています。

勤労基準法により、労働委員会から救済命令を受けた使用者が、履行期限までに救済命令を履行しない場合、救済命令後一定期間に履行しない場合、3000万ウォン以下の履行強制金が賦課され、その後にも履行しないと2回目に、1,000万ウォン、3回目は1,500万ウォン、最後の4回目は2,000万ウォンを賦課することになります。
毎年2回の範囲内で救済命令が履行されるまで履行強制金が課されます。
なお、履行強制金は2年を超えて賦課・徴収することはできません。





