海外での労働法・社会保険・税務

フィリピンの労働法・社会保険・税務について

多田国際ナビ

フィリピンの労働法

フィリピン現地の労働法に基づく労働時間、休日、休暇、時間外労働、休日労働、有給休暇、解雇、解雇手当についてご説明いたします。

フィリピンにおける労働法の概要

フィリピンは、ASEAN加盟国の中でも高い水準で経済成長をしています。高い英語力と充実した政府サポートによる海外就労者が1,000万人(10人に1人の割合)おり、世界最大の労働力輸出国と言われます。ASEAN加盟国において、賃金の上昇率は低いものの労働者の賃金や所得は向上が見うけられます。

フィリピンの労務の特徴

① 労働者の権利を保護
⇒フィリピン労働法典に規定された正当な理由以外で解雇することは禁止されている。整理解雇をする場合、雇用終了予定日の1か月前までに労働者及び労働雇用大臣に書面で通知する必要がある。

② 労働契約書が重要
⇒雇用契約を神聖なものとして保護し、雇用契約に労働者の雇用日、報酬と手当、役割と責任等を記載することとしている。

③ コモン・ロー法制の一部採用
⇒法を厳格に適用した場合に労働者側に働くようなときは、コモン・ローの観点から調整がなされる。また、各種制定法のほか、各ケースの判断をもとにした規範も法的拘束力を持ちうる。

④ 労働条件の不利益変更は難しい
⇒労働条件を一方的に不利益に変更することは難しく、同意なしの減給、降格、休暇の減少等はできない。

労務関連事項 管轄省庁 労働雇用省(Department of Labor andEmployment, DOLE)
労務に関する法律 労働法典
※すべての労働者に適用される
労働契約の締結

フィリピンには就業規則のほとんどすべての会社が就業規則を作成していますが、作成義務はありませんが、推奨されています。基本的に労働条件は“労働契約書”の定めに基づき決定します。

フィリピン 日本
雇用契約書に明記すべき事項 あり(就業日、労働時間、報酬と手当、役割と責任等) あり(就業場所・労働時間・賃金等)
雇用契約書の役割 法律上、6箇月間までの試用期間(合意があれば長短は可能)が認められており、6箇月後に改めて正社員の雇用契約を結ぶので、基本的には重要 就業規則を前提として、個人で定める事項の明示

慣れないうちは契約書の作成を専門業者へ委託しましょう。

注意事項

・必ず記載しなければいけない事項等はありません。
・試用期間の延長が認められるのは人事評価に基づき、本人の同意があれば可能です。
・退職金は労働者が60歳以上65歳以下であって、その会社のもとで5年以上勤務した場合には退職時に退職金を請求することができます。金額は、勤務1年ごとに半月分の賃金と同額の割合で認められ、6箇月以上の勤務期間は1年として計算されます。

労働法の定める基準と祝日

フィリピンの労働法は、労働者の権利を保護したものとなっております。

区分 フィリピン
1日労働時間 8時間まで
週労働時間 48時間まで(60分以上の食事休憩、休憩時間も労働時間とみなす)
休日 1週1日(連続6日間の勤務日毎に連続24時間以上の休息を与える)
フィリピンの1年間の祝日数
※前年の夏に発表される
21日(2022年のもの。一般祝祭日:10日、特別祝祭日9日)
時間外割増 25%以上を支給
休日割増 30%以上を支給、一般祝祭日は100%以上、特別祝祭日は30%以上、特別祝祭日と週休が重なれば50%
深夜 10%以上を支給(午後10時~午前6時)
Q.フィリピンに最低賃金制度はあるのですか?

A.あります。地区によって、また農業/非農業によって最低賃金が異なります。

休暇

労働法には年次有給休暇と、その他女性労働者特有のものや出産・育児に対する休暇があります。

年次有給休暇 1年以上勤続で権利発生。日数は勤務年数を問わず、年間最低5日間(但し、常時10名未満の労働者の会社の労働者、事業の存続可能性や財務状況により免除された会社の労働者は適用されない)
出産休暇 女性労働者に対し、産前産後を合わせて最大105日まで有給で取得できる (取得時期については産前産後を問わない)。シングルマザーは加えて15日の有給休暇を取得できる。さらに30日間の無給休暇の取得もできる。
父親の育児休暇 7日間まで有給。分けて取得も可能。出産日から60日以内に限る。子ども4人まで使用可能。(1人につき7日)
シングルペアレント育児休暇 1年以上勤続したシングルペアレントIDを持つ場合に権利発生。年7日までの有給育児休暇が取得できる。対象となる子供は未婚・未就業で18歳以下の同居する子供、もしくは18歳以上であって精神的・身体的な障害などからサポートが必要な場合
女性特別休暇 12ヶ月の期間内に6カ月以上勤務した女性労働者に対し、2か月間までの婦人科疾患手術を受けるときに、有給休暇を与える。
女性及び子どもに対する暴力の被害者のための休暇 暴力の被害にあった女性労働者に対し10日間の有給休暇が付与。
従業員を解雇する際の制度

日本では、従業員を解雇する際には、少なくとも30日前に予告するか、しない場合には30日以上の平均賃金を支払わなければならないという法制がありますが、フィリピンにも下記のように解雇する際の法制度があります。労働者に非常に有利に設定されています。

解雇制度のポイント
①解雇の際、法律上の規定された正当な理由以外での解雇を禁止 ⇒懲戒解雇に該当する正当理由、整理解雇に該当する承認理由はあるが、能力不足による解雇は明示されていない。
②法律上規定された以外の解雇は違法な解雇として解雇無効 ⇒復職義務を負うとともに、不払い賃金及び手当の支払い義務及び発生した損害について賠償義務を負う。
③承認理由の場合、雇用契約解除の予告通知が必要※整理解雇時 ⇒解雇時には、契約解除の旨を労働者に1か月前までに労働者及び労働雇用大臣に書面で通知
④正当理由の場合、予告通知を行った後、必ず弁明の機会を与える。 ⇒弁明の機会の後、それでも会社が解雇すると決定した場合は、再度書面(最終決定通知)を送付
⑤承認理由の場合、少なくとも1か月前までに労働者と労働局に対して通知をする。※整理解雇時 ⇒さらに省力化による人員余剰の場合は、勤務1年につき1か月分の給与と同額の解雇手当が必要。損失防止の人員削減、閉鎖又は操業停止及び疾病の場合は、勤務1年につき半月分の給与と同額の解雇手当が必要。

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