海外での労働法・社会保険・税務

中国(上海)の労働法・社会保険・税務

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中国(上海)の個人所得税

国によって個人所得税のルールは様々です。中国(上海)の個人所得税、短期滞在者免税(183日ルール)、課税所得の範囲、現地での税金の納付方法、罰則、退職金の取扱いについてご説明いたします。

中国(上海)の所得税の基本

中国での居住者、非居住者の範囲は下表のとおりとなります。2019年1月より、中国での居住者の定義が明確化されました。以前は183日超え1年未満は非居住者と考えられていましたが、183日を超える滞在は居住者へ整理されることとなりました。なお、滞在期間が6年を超えると、日本の不動産収入等の「中国国外源泉所得」が課税となることに注意が必要です。

区分     

定義(個人所得税法第1条) 中国国内源泉所得

例:現地及び日本給与

中国国外源泉所得

例:日本の不動産収入

居住者とは

中国国内に住居を有する個人 課税 課税
中国での滞在期間が6年超え 課税 課税
中国での滞在期間が183日超え6年以下 課税

非課税

非居住者

①中国国内で住所を有しておらず、かつ

居住していない

②183日以下

課税

短期滞在者免税適用の場合非課税

非課税

出張者の所得税の基本 〜183日ルール〜

給与に対する課税権は、給与を支払った企業が居住する国ではなく、給与の対価となる役務を提供した国にあります。 つまり出張者とはいえ、その労働が中国国内で行われているのであれば、出張者の給与の課税権は原則として中国にあるということになります。

しかし、勤務日数が183日以下等一定の条件を満たした場合は勤務国での課税は免除されるという、各国の租税条約で定められる短期滞在者免税制度というものがあります。

中国の短期滞在者免税適用の要件は下記のとおりです。

中国の短期滞在者免税適用の要件

1. 滞在日数基準
Aさんの中国での滞在期間が1課税年度(1/1〜12/31)を通じて合計183日以内であること
※参考※アメリカは・・・ 「継続する12ヶ月において、合計183日以内」
2. 支払地基準
Aさんに支払われる報酬が、中国の居住者(中国現地法人等)又はこれに代わる者から支払われていないこと
つまり、報酬全てが日本本社から支払われていればこの条件はクリア!
なお、近年出張者の給与について「寄付金課税」がなされるというケースが増えています。
どういうケースかというと、通常日本から現地の子会社に出張させる場合、現地の要請に基づき業務を支援する等、 本社業務の必要からでない時は、本来は給与だけでなく航空券、ホテル等も子会社で負担すべきものとなります。 この経費を本社が負担した時は、子会社に対する寄付金とみなされ、日本本社に日本の当局から寄付金として課税されてしまうものです。

短期滞在者免税の例外

高級管理職には、183日ルールは適用されず個人所得税の申告・納税義務を負います。 非居住者であっても中国における所得は全額課税対象となり、国外所得についても中国滞在日数に応じて日割で納税額を算出して納税しなければなりません。 日本と中国の二重課税になりますので日本で確定申告をし、控除を受けます。

高級管理職とは?

日本本社の社員で、中国の現地法人において「董事長(とうじちょう)・総経理・副総経理・各職務長等の管理職の肩書を持つ者

183日を超えた場合は?

183日を超えた段階で納税義務が発生し、183日を超過した日数分だけでなく、これまでの中国滞在日数分の納税が必要となります。 なお、納税のタイミングは、滞在日数が183日を超えた月の翌月の15日までとなります。

滞在日数はパスポートで確認することができることから、税務局から指摘を受けるリスクはあります。 その場合には罰金(中国の罰金は高い)が課されます。

個人所得税 課税所得の範囲

赴任者の勘違いや知識不足による個人所得税の申告漏れが散見されます(過少申告) また、中国は【発票主義】といわれ領収書のない経費は課税とされるのが特徴です。中国における課税所得の範囲は下記のとおりです。

手当 非課税対象となる場合 課税対象となる場合
住宅手当 会社が費用を支払い、現物支給する場合 定額の住宅手当を支給する場合
子女教育手当・語学研修手当 証憑(しょうひょう)提出がある場合で、かつ中国国内での適正な部分 例:日本人学校の費用 ① 証憑の提出がない場合
② 中国国外の学校に通学する子女に対する教育手当
ホームリーブ手当 年間2回まで、かつ証憑の提出がある場合で適正部分 ① 証憑の提出がない場合
② 年2回を超える場合
出張手当 証憑の提出がある場合でかつ適正な基準で支給されている場合 ① 中国非居住者が取得する出張手当
② 証憑の提出がない場合
赴任・帰任時の荷造運送費 証憑の提出がある場合でかつ適正な部分 ① 証憑の提出がない場合
② 定額を支給する場合
保険料 中国国内の社会保険料のみ 海外赴任者が負担した日本の社会保険料(個人負担分)
② 中国現地法人又は日本本社が負担した海外赴任者の日本の社会保険料(会社負担分)
③ 生保、損保等の保険料
中国赴任者の個人所得税 計算方法

中国の個人所得税の計算方法には、① 税額個人負担方式 ② 税額会社負担方式の2通りの計算方法があります。 海外赴任者の場合、赴任地での所得税は会社が負担することが多くなっていることから、② 税額会社負担方式で計算を行うことが多くなると考えられます。 尚、4,800元は外国人の費用控除額(一律)となります。

方式 使用するケース 個人所得税額の計算方法
① 税額個人負担方式 税込の金額で給与を受ける場合 所得税額 = (税込み給与 – 4,800元)
× 適用税率 – 速算控除額
② 税額会社負担方式 税引き後の金額で給与を受け取る場合 所得税額 = {((税引き給与 – 4,800元) – 速算控除額)
÷ (1 – 税率)} × 適用税率 – 速算控除額
税額会社負担方式<月額>
(税引給与 -4,800元)
適用税率 速算控除額
1 〜1,455元以下 3%
2 1,455元超〜4,155元以下 10% 105元
3 4,155元超〜7,755元以下 20% 555元
4 7,755元超〜27,255元以下 25% 1,005元
5 27,255元超〜41,255元以下 30% 2,755元
6 41,255元超〜57,505元以下 35% 5,505元
7 57,505元超 45% 13,505元
計算してみよう!

手取り保障として日本の給与含め50万(27,778元)を支給される赴任者の場合
※1元 = 18円で計算

27,778元 – 4,800元 = 22,978元
→上図の4の区分を適用

{(22,978 – 1,005) ÷ (1 – 0.25)} × 25% – 1,005 = 6,320元

約113,760円が所得税となります。

税金の納付方法・罰則
税金 納付方法

上海では、日本と同様に給与支払者が源泉徴収し毎月納税します。 国内給与と合算して毎月申告し税額を確定させる方式となりますので日本のような年末調整はありません。 しかしながら年間所得が12万元以上の者は確定申告を行う必要があります。

中国の確定申告は日本の確定申告と異なり、確定申告で加算・減算し、税額を確定させるというような性質のものではなく、 毎月の申告を、再確認のため申告するといったような性質のものとなります。

税金 罰則

よくある過失に、中国払い給与については中国で所得申告をしていたが、日本払い給与については、申告が漏れていたということがあります。

日本払い給与については、これまでも特段指摘を受けておらず、自ら申告しない限り税務当局にはばれないだろうという企業も多くなっているのは事実ですが、 中国における申告漏れに対する罰則は、年率18.25%の延滞税に加えて、追徴税額の50%〜500%以下の加算税が科せられるという厳しいものになっています。

※日本は、加算税は20%に留まる。

中国で退職した場合 退職金の取り扱い

中国で退職を迎える社員がいる場合の課税処理については、下表の通りとなります。

区分 中国側 日本側
A 非居住者に対する国内源泉所得として20%の所得税(※)
B 中国での居住期間が1年以上5年以内の場合
滞在期間分のみ中国で課税)
なし
C 中国での居住期間が5年超の場合
(退職金全額が中国で課税)

この表のとおり、中国で退職金を受け取ってしまうと中国滞在期間中に係る部分又は全額に対して中国で課税されることとなります。 日本では退職金に対して【税負担軽減】のための制度がありますので中国での課税額は日本に比べて高額となっていまいます。

なお、赴任者は、居住者として退職金の支給を受けたものとみなし、会社で20%の源泉徴収を受けた所得税額との差額を確定申告により還付請求することもできますが、 手間も生じることから基本的には日本で退職し退職金を受領することがシンプルで確実な方法となります。

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